インビザラインができない?難しい症例と対処法を紹介
「インビザラインができない症例は?」
「インビザラインが難しい人の特徴とは?」
「インビザラインができない場合に検討すべきことは何?」
見た目も性能も上がった最先端の矯正器具、インビザライン。
本記事では、そんなインビザラインの苦手な動きや難しい場合の症例などについて解説していきます。
虫歯や歯の痛み、歯ぐきの腫れに悩んでいる方、治療を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
インビザラインが苦手な動き
インビザラインは、特定の歯の動かし方に苦手意識があります。
たとえば、歯を平行に移動させる、歯を回転させる、歯を縦方向に動かすなどの動きは、インビザラインのマウスピースの力では難しいとされているからです。
これは、マウスピース矯正の限界とも言える部分で、とくに重度の歯並びの乱れや叢生が激しいケースでは、インビザラインだけでは対応が難しくなるでしょう。
このような症例では、従来のワイヤー矯正や裏側矯正などの他の矯正方法を検討する必要があります。
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インビザラインの種類
インビザラインには複数のパッケージがあり、それぞれ異なるニーズに応えます。
以下は主な種類とその特徴です。
インビザライン・ライトパッケージ | 軽度な症例に適しており、最大14枚のアライナーを使用します。コストパフォーマンスに優れ、短期間での治療が可能です。 |
インビザライン・エクスプレスパッケージ | 非常に軽度な症例に対応し、最大7枚のアライナーで治療を行います。治療期間は約3〜4か月と短く、前歯のみの矯正に最適です。 |
インビザライン・ファースト | 成長過程にある子供向けに設計されたパッケージで、乳歯と永久歯が混在する時期の矯正に適しています。 |
インビザラインGO | 一般歯科医師でも行えるシステムで、スマートフォンを使用して口腔内を撮影し、症例適応の判定が可能です。20枚までのアライナーを使用し、軽度から中等度の症例に対応します。 |
矯正が難しい場合は、重度の歯並びの乱れや複雑な咬合の問題が原因です。
これらの症例では、インビザラインのパッケージでは対応が難しく、従来のワイヤー矯正や裏側矯正などの代替治療法が推奨されます。
インビザラインができない場合の特徴
インビザラインの弱点がわかったところで、ここからはインビザラインができない場合の2つの特徴を解説していきます。
インビザラインができない場合の特徴
- 骨格に問題がある
- 歯を大きく動かす必要がある
それぞれ見ていきましょう。
骨格に問題がある
インビザライン治療は、骨格の問題がある場合には適用が難しいことがあります。
たとえば、上顎前突や下顎前突など、顎の位置に大きな偏りがあるケースでは、マウスピースだけでは対応が困難です。
これは、インビザラインが主に歯を動かすことに特化しているため、骨格自体の位置を変える必要がある症例には適していないからです。
とくに、骨格の問題が原因で不正咬合が生じている場合、単に歯を動かすだけでは根本的な解決には至りません。
このような状況では、顎の骨自体の位置を調整する必要があり、それにはより複雑な治療計画が必要になります。
このため、インビザラインでは対応が難しいとされています。
歯を大きく動かす必要がある
インビザライン治療は、歯根膜と歯槽骨の動きを利用して、歯を徐々に動かすマウスピース矯正です。
しかし、歯を大きく動かす必要がある場合、インビザラインの効果は限られます。
とくに、重度の歯並びの乱れや顎の骨格に問題がある症例では、インビザラインだけでの治療が難しいことがあります。
これは、マウスピースの力だけでは、大規模な歯の移動や骨格の調整が困難であるためです。
インビザラインはアタッチメントという補助的な処置を用いても、限界があるとされています。
このような症例では、従来のワイヤー矯正や他の矯正方法を検討する必要があり、個々の症例に応じた最適な治療法の選択が重要です。
インビザラインができない症例
ここからは、インビザラインができない症例を紹介します。
一般的には、以下の5つが挙げられます。
インビザラインができない症例
- 重度の歯並びの乱れがあるケース
- 叢生が激しいケース
- インプラントが複数あるケース
- 歯周病が進行しているケース
- 抜歯の本数が多いケース
それぞれ確認してください。
症例①重度の歯並びの乱れがあるケース
出っ歯や受け口は、インビザラインでの治療が難しい代表的な症例です。
とくに重度の場合、マウスピースの力だけでは対応が困難になります。
たとえば、出っ歯が改善されたインビザラインの体験談が掲載されていますが、これは比較的軽度のケースに限られます。
また、受け口の治療には十分なスペースが必要で、場合によっては外科矯正が必要になることもあります。
重度の歯並びの乱れには、インビザラインと他の矯正方法の併用や、別の矯正治療が適していることが多いです。
出っ歯や受け口の症例では、インビザライン単独での治療が難しいことが多く、とくに重度のケースでは他の矯正方法との併用や、外科矯正を含めた総合的な治療計画が必要になることがあります。
インビザラインは、軽度から中等度の歯並びの乱れには効果的ですが、重度のケースでは限界があるため、専門医との十分な相談が重要です。
症例②叢生が激しいケース
インビザライン矯正は、叢生(そうせい)と呼ばれる歯並びの乱れに対応できますが、重度のケースでは限界があり、特別な対応が必要です。
叢生は、歯が凸凹していて、ガタガタの状態を指し、虫歯や歯周病になりやすいとされています。
重度の叢生にはワイヤー矯正とインビザラインの併用が効果的です。
また、インビザライン治療を受けた患者の90%以上が有意な改善を達成していますが、治療にはアライナーの追加が必要な場合もあります。
インビザラインは、見た目の改善だけでなく、歯の健康を守るためにも重要な選択肢となり得ます。この治療法は、とくに歯が重なり合っている場合や、歯ブラシでの清掃が困難な状況において、歯の健康を維持する上で大きなメリットをもたらすでしょう。
症例③インプラントが複数あるケース
インビザライン矯正は、その透明性と取り外し可能な利便性で人気ですが、インプラントが複数ある場合は特別な配慮が必要です。
インプラントは固定されて動かせないため、周囲の歯の調整が中心となります。
インビザラインは多くの症例に対応可能ですが、インプラントがある場合、矯正治療の計画はより複雑になります。
インプラント周辺の歯並びを整えることで、全体のバランスを改善するアプローチが求められます。
このため、インビザライン治療を検討している方は、インプラントの有無を考慮し、経験豊富な矯正歯科医との詳細な相談が不可欠です。
インプラントがある場合のインビザライン治療は、個々の症例に応じたカスタマイズが必要であり、患者さんの具体的な状況に合わせた治療計画の策定が重要となります。
症例④歯周病が進行しているケース
重度の歯周病は、インビザライン矯正の大きな障害となります。
歯周病が進行している場合、矯正治療によって歯に加わる力が、すでに弱っている歯や歯茎に悪影響を及ぼし、最悪の場合、歯が抜けるリスクが高まるからです。
そのため、重度の歯周病がある方は、インビザライン矯正を行う前に、まず歯周病の治療を優先する必要があります。
歯周病治療後に矯正治療を行う場合も、患者の口内状況に応じて治療計画を慎重に立てることが重要です。
インビザラインは、健康な歯と歯茎の状態を前提としているため、歯周病の進行は治療の可否を左右する重要な要因となります。
詳細な診断と適切な治療計画により、歯周病を克服した後の矯正治療は可能ですが、専門医の指導のもと、慎重に進めることが求められます。
症例⑤抜歯の本数が多いケース
インビザライン矯正は、抜歯の本数が多いケースにおいて特別な配慮が必要です。
多くの抜歯が行われた場合、歯を長距離移動させる必要が生じることがあり、インビザラインのマウスピース型矯正装置ではこれが難しいとされています。
しかし、症例によっては抜歯があってもインビザラインでの治療が可能な場合もあります。
インビザライン矯正は、歯を内側や外側に移動させることは可能ですが、平行に長距離移動させることには向いていません。
そのため、抜歯の本数が多いと、歯の移動距離が長くなり、インビザラインでの治療が困難になることがあります。
このような場合、従来のワイヤー矯正や他の矯正方法が代替治療として検討されます。
インビザライン治療を検討している方は、まずは専門の歯科医師に相談し、自分の症例に最適な治療法を選択することが重要です。
インビザラインが難しい方の特徴
次に、インビザラインが難しい方に共通しがちな3つの特徴を見ていきましょう。
インビザラインが難しい方の特徴
- マウスピースを長く装着できない方
- 口内やマウスピースを衛生的に管理できない方
- 適切にマウスピースを交換できない方
それぞれ解説していきます。
マウスピースを長く装着できない方
インビザライン治療において、マウスピースを長時間装着することは重要です。
しかし、22時間の装着が難しい方もいます。
これは、生活スタイルや仕事の性質、口内の感覚によって異なります。
たとえば、頻繁に食事や飲み物を摂る職業の方や、口内の違和感に敏感な方は、長時間の装着が困難になるからです。
このような場合、歯科医師と相談し、装着時間の調整や他の矯正方法の検討が必要です。
口内やマウスピースを衛生的に管理できない方
インビザライン治療の成功は、口内やマウスピースの衛生管理に大きく依存します。
適切な管理ができないと、治療効果が低下し、口内環境の悪化につながる恐れがあるからです。
たとえば、インビザラインのアライナーは患者さん自身で取り外しが可能ですが、これにより自己管理の重要性が増します。
アライナーの洗浄方法としては、やわらかめの歯ブラシで優しくブラッシングすることが推奨されています。
適切にマウスピースを交換できない方
インビザライン治療において、マウスピースの適切な交換は成功の鍵です。
インビザラインのマウスピースは通常1~2週間ごとに交換、1枚で最大0.25mmの歯の動きを実現します。
しかし、適切に交換できない方は、治療の効果を最大限に引き出せなくなります。
これは、マウスピースが歯を徐々に動かすため、計画通りに交換しないと治療の進行が遅れるためです。
とくに、矯正治療は精密なタイミングが求められるため、定期的な交換が不可欠です。
インビザラインができない場合に検討したいこと
最後に、インビザラインができない場合に検討したい3つのことについて解説していきます。
インビザラインができない場合に検討したいこと
- ワイヤー矯正
- ワイヤー矯正とインビザラインの併用
- 裏側矯正
それぞれ確認してください。
ワイヤー矯正
インビザラインが適さない場合、ワイヤー矯正は優れた選択肢です。
ワイヤー矯正は、重度の歯並びの乱れや叢生などの複雑な症例にも対応可能。
目立つというデメリットはありますが、その効果は確かです。
インビザラインとワイヤー矯正は、適用範囲や治療期間、費用などで異なります。
ワイヤー矯正は、インビザラインよりも幅広い症例に対応し、しっかりとした矯正効果を期待できるため、インビザラインが適さない場合の有力な代替手段となります。
ワイヤー矯正とインビザラインの併用
インビザライン単体では対応困難な症例でも、ワイヤー矯正との併用により治療可能になることがあります。
この併用治療は、とくに重度の歯並びの乱れや、奥歯の位置調整が必要なケースに効果的です。
ワイヤー矯正はすべての症例に対応可能で、インビザラインと組み合わせることで、治療範囲が広がり、より効率的な治療が期待できます。
この併用治療は、インビザラインの目立たない特徴とワイヤー矯正の効果的な歯の動かし方を組み合わせることで、より多くの患者に適した選択肢を提供します。
裏側矯正
インビザラインが適用できない場合、裏側矯正は魅力的な代替手段です。
この矯正方法は、歯の裏側に装置を装着するため、他人に気付かれにくいのが最大のメリットです。
また、虫歯になりにくく、日常生活においても外見の違いを気にせず過ごせるでしょう。
ただし、発音の変化や装置の違和感などのデメリットもあります。
この方法は、見た目を重視する方や、インビザラインが適用できない特定の症例に適しています。
インビザラインが適用できない症例は主に5つ
今回は「インビザラインが適用できない症例」というテーマについて詳細にまとめました。
重要な結論として、インビザラインが適用できない場合でも、裏側矯正やワイヤー矯正などの他の矯正方法が有効です。
歯並びの悩みを抱えている方は、この記事を参考に、自分に合った最適な矯正治療法を見つける一歩を踏み出してみてください。
コラム監修者
資格
略歴
- 1997年 明海大学 歯学部入学
- 2003年 同大学 卒業
- 2003年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 顎口腔機能再構築学系 摂食機能保存学講座 摂食機能保存学分野 博士課程 入学
- 2006年 顎咬合学会 特別新人賞
- 2007年 同大学院 修了 歯学博士所得
- 2007年 東京医科歯科大学 歯学部附属病院 医員
- 2007年 世田谷デンタルオフィス 開院
- 2008年 医療法人社団世航会 設立
- 2013年 明海大学歯学部 保存治療学分野 非常勤助教
- 2014年 明海大学歯学部 保存治療学分野 客員講師
- 2015年 昭和大学歯学部 歯科矯正学分野 兼任講師
- 2016年 明海大学歯学部 補綴学講座 客員講師
- 2020年 日本大学医学部 大学院医学総合研究科生理系 入学