インプラント治療の抜歯とは?抜歯後の痛みと2つの治療方法
インプラント治療は、人工的に作成した土台と被せ物を使って、天然歯のように自然な噛み合わせを実現する歯科治療です。
矯正治療と同じく、インプラントも場合によっては歯を抜かなければならないケースがあり、抜歯後にインプラントの埋入が行われます。抜歯が必要かどうかは、患者さん自身のお口の中の状態や診察結果、治療計画によって決定されます。
この記事では、インプラント治療で抜歯が必要なケースについて、また抜歯後の埋入手術として「1回法」と「2回法」のメリット・デメリット・治療の流れを紹介します。
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目次
インプラントで抜歯が必要なケース
インプラントで抜歯が必要なケースは、以下のとおりです。
【インプラント前に抜歯が必要な例】
- 歯根が残っている
- 虫歯・歯周病の進行
- 歯の割れや欠けがある
- 噛み合わせが原因の場合
インプラントでは、虫歯や歯周病が重度までに進行していると歯を支える組織が正常に機能しなくなるおそれがあるため、抜歯が必要になります。
虫歯の例でいえば、「進行によって歯の表面が失われているが、歯根だけはまだ残っている」ケースがあります。しかし、歯根だけをそのまま残していても失われた歯は元に戻らず、歯根にも虫歯の進行をきたすおそれがあるため、きれいに抜歯を行ってインプラントを埋め込む治療が提案されます。
詳しい治療の方向性や内容については患者さんごとの症状や状況にもよりますので、主治医と相談のうえで治療計画を決めることが大切です。
たとえば歯周病で歯ぐきが大きく後退している、あごの骨まで失われているようなケースでは、歯が自然に抜け落ちてしまいます。そうした病気の進行状況を診ながら抜歯を行い、治療を施してインプラントの治療に進みます。
歯周病にかかっていなくても、歯に割れ・欠け・ヒビがあるときも歯の機能を鑑みて、しっかりと歯が自立できるかどうかをチェックします。万が一自立が難しい場合は抜歯を行い、歯根からインプラントの埋め込みを行わなくてはなりません。
歯の割れ・欠け・ヒビは歯の上部だけではなく、歯根にも表れることがあります。割れや欠けのある部分は細菌に侵されやすいため、抜歯によって細菌による病気のリスクを取り除く必要があるのです。
噛み合わせに問題があり、ワイヤーブラケットやマウスピースによる矯正でも解消されないケースでは、その部分を抜歯して再度矯正治療に入ったり、矯正を必要としない箇所にインプラントを埋入したりすることがあります。
無理やりな抜歯に注意
抜歯は、歯根が残っている患者さんがインプラントを埋め込む際に行われますが、インプラント治療を実施しないのであれば、必ずしも必要な処置ではありません。
どうしても歯根を抜かなければならない場合というのは、歯根そのものの状態や歯の状態を診たうえで決定されます。しかし、なかには診療報酬を目的に抜歯を勧めてくるケースもあるようです。
インプラント治療は自費診療のため、一般的な歯科治療よりも高額な費用がかかります。
そのため、患者さん目線ではない歯医者からは、必要のない治療を勧められる場合があります。
不必要な抜歯を勧められたと感じたときはセカンド・オピニオンを活用し、信頼のできるクリニックを選びましょう。
こちらの記事では、インプラント治療で1本あたりにかかる費用の相場と、治療費を抑える方法を解説しています。合わせてご覧ください。
関連記事:インプラント1本あたり費用相場と治療費を抑える方法
インプラントの抜歯の際の痛みについて
インプラント治療での抜歯は、親知らずを抜く際の抜歯と同じく、局所麻酔または全身麻酔を使用して、痛みを感じない状態で行われます。
手術中は麻酔の効果によって痛みらしい痛みはありませんが、万が一麻酔の効果が少ないと感じた場合には麻酔を追加してもらえますので、その旨を医師に伝えてください。
関連記事:インプラント治療で痛みを感じるタイミングや和らげる方法
抜歯中と抜歯後はそれぞれどのくらい痛いのか?
抜歯中は麻酔が効いているため、痛みらしい痛みはありません。麻酔の効き目が良くない場合は追加されますので、痛みを緩和することができます。
抜歯後は、麻酔が時間の経過とともに薄れていきます。軽微な痛みから、少しずつ傷口の痛みを実感するようになり、ズキズキとした感覚が出てきます。抜歯の本数が1本以上の方は、より痛みがはっきりと出る傾向にあります。
抜歯後の痛みについては、1〜3日後までがピークであり、その後は少しずつ和らいでいきます。熱感や激しい痛みがある場合は感染症やその他のトラブルが起きている可能性があるため、再度診察を受けてください。
お口の中は常に清潔を心掛け、医師の指示にしたがって鎮痛剤を服用しながら、安静にして回復を待つようにしましょう。
こちらの記事では、インプラントの術後について、注意したいポイントを詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
関連記事:インプラント治療術後の過ごし方とは?食事や歯磨きの注意点
抜歯後のインプラント治療
抜歯後は、「1回法(抜歯即時埋入法)」と「2回法(抜歯待時埋入法)」というインプラント治療が行われます。一般的には2回法で丁寧に治療を進めていきますが、治療に時間がかけられないなどの理由で1回法を選ぶことも可能です(要診察)。
1回法(抜歯即時埋入法)
1回法は抜歯即時インプラント、1dayインプラントとも呼ばれており、インプラントを埋め込みたい箇所を抜歯してその日にインプラントが埋め込める手術です。外科手術にかかる負担や回数、費用が抑えられるため、効率的であり体にかかる負担も軽減できる治療方法です。
ただし、骨が薄い・少ない・密度に不安がある方は1回法が難しい場合があるため、骨造成を行うなどして土台を造るところから行わなければなりません。1回法に適しているかどうかは医師の診察が必要であり、しっかりと話し合いを行ったうえで実施しましょう。
2回法(抜歯待時埋入法)
2回法は一般的なインプラント治療の方法であり、抜歯後に期間をおいて1回目の手術としてインプラントを埋め込み、さらに期間を空けて治癒してから2回目の手術で完全なインプラントの歯を形成します。
麻酔がかかる治療のため痛みはありませんが、2回の手術が必要であることから、心理的な負担が少なくない方もいらっしゃいます。
しかし、骨や傷口の状態をしっかりと見極めながら治療が行えるので、1回法よりも感染症やその他のトラブルを防ぐことができます。
こちらの記事では、インプラントの種類を、構造や形状などを6つに分けて解説していますので合わせてご覧ください。
関連記事:インプラントにはどのような種類がある?基本的な構造も紹介
1回法(抜歯即時埋入法)について
インプラント治療の「1回法」は、抜歯即時埋入法(ばっしそくじまいにゅうほう)と呼ばれます。2回法をさらに効率的にした手術で、抜歯後すぐに洗浄と消毒を行い、インプラントを埋め込みます。
ここからは、1回法のメリット・デメリット・治療の流れを詳しくみていきましょう。
メリット
1回法では、抜歯を行った部分に消毒洗浄を施し、その場でインプラントの歯根部分を埋入することができます。
治療に時間をかけず、効率的に治療を行えるために、クリニックへ頻繁に通えない方におすすめの方法です。2回法のように2度に分けて手術や切開を行う必要がなく、体への負担も最小限に抑えられる点もメリットです。
2回法はすべての治療を終えるまでに数ヶ月、長い方では1年近くかかるともいわれていますが、1回法では抜歯のあとの傷口の回復を待たずに即座に埋め込みを行い、インプラント体と骨との結合を待つことができます。
抜歯をしてから期間を空けて、再度インプラント体を埋め込もうとすると、久々の治療で緊張するという患者さんも少なくありません。1回法であれば外科手術は1回のみ、それ以外の治療や通院にかかる費用も2回法より安く抑えられるため、肉体的・精神的・金銭的な負担が抑えられます。
デメリット
1回法は、抜歯直後にインプラント体を埋入する手術です。患者さんの骨や歯周組織の状態によっては、抜歯直後に経過観察や骨造成治療が必要になるため、必ずしもすべての患者さんが1回法を受けられるわけではありません。
クリニックによっては、1回法に対応できるインプラントを導入していないところもあります。医師の手腕が1回法に対応できていないケースもあるため、1回法を希望される場合は、必ず1回法の実績が豊富であり治療の可・不可を見極められる医師を探すことが大切です。
治療の流れ
1回法では、麻酔を行って必要な歯や歯根を抜いてから、埋入箇所をきれいに消毒洗浄します。インプラントを歯槽骨に埋め込んでから、カバースクリューと呼ばれるパーツを上に取り付けてフタをし、その状態で縫合します。ここまでが一次手術となり、それ以降は手術の必要がありません。
縫合箇所は、期間をあけて回復と治癒をうながします。歯がない状態では審美的な問題があるため、回復期間中には仮歯を装着します。骨とインプラントが結合したところで、1週間以上が経過してからアバットメントでインプラントを連結させ、その上に人工の被せ物を装着します。ここまでがインプラント手術(1回法)の流れです。
2回法(抜歯待時埋入法)
インプラント治療の「2回法」とは、抜歯待時埋入法(ばっしたいじまいにゅうほう)とも呼ばれます。抜歯を行い、歯の抜けた部分が回復するのを待ってから、後日インプラントを2回に分けて埋め込む方法です。さらに詳しく、メリット・デメリット・治療の流れをみていきましょう。
メリット
2回法では、抜歯後すぐにインプラントを埋め込まずにしっかりと回復を待ちます。すぐに埋め込みをしない理由は、歯周組織の安定した状態で治療を進めるためです。
歯周病の感染リスクが抑えられる、痛みの少ない状態から治療が再開できる、抜歯箇所の骨の状態をチェックして骨造成などを先に行えるといった点がメリットになります。
傷口が開いたままの状態は、感染症のリスクが伴います。抜歯後すぐ〜2ヶ月程度は抜歯箇所周辺の感染に注意しなければならないため、2回法では必ず2ヶ月以上の期間をあけてから2回目の手術に入ります。
また、1回法では骨の密度が十分ではないのに治療を進めてしまう可能性がありますが、傷口がふさがってから状態をチェックできる2回法の場合、骨造成や移植手術をして歯の土台となる骨をしっかり造ることが可能です。
デメリット
2回法は抜歯のあとで1回目の手術を行い、2回目も再度インプラントの上部構造の埋入を行うため、外科手術を2回繰り返さなければなりません。外科手術が苦手な方、痛みに弱い方、費用をかけたくない方にとっては1回法よりも負担に感じられる可能性があります。
1回法では即時埋入が可能ですが、2回法では傷口の回復を2ヶ月以上かけて待機します。骨造成を行っている場合は、それ以上の期間を経過観察に充てなくてはなりません。インプラント治療をトータルでみた場合、1回法よりも時間がかかってしまうことがデメリットとなるでしょう。
2回法は、2度目の手術までにやや時間が空いてしまいます。前歯のように外から見えやすい部分については、抜歯後に入れる仮歯が不自然に見えていないか気にされる方もいらっしゃいます。
治療の流れ
2回法では、まず麻酔を行って必要な歯や歯根を抜きます。抜歯後に「仮歯」と呼ばれる歯を入れて、2回目の手術まで1ヶ月から2ヶ月、場合によっては3ヶ月以上期間を設けます。骨造成が必要な方は、抜歯後に別途形成手術を行います。
十分に回復期間を空けたあと、傷口と骨が回復したことを確認してからインプラントの埋入手術を行います。この手術が1回目となります。インプラントを埋め込んだあとは歯ぐきで覆って縫合を行います。
1回目に埋め込んだインプラントは歯根にあたる部分です。この部分と患者さん自身の骨が結合するまでに、約3ヶ月から半年の期間を要します。待機後、骨との結合が確認できたところで二次手術に入ります。縫合した歯ぐきを切開し、インプラントの頭部を表面に出して、その上にキャップを被せます。
傷の回復を待ってから型取りをして、1週間以上経過後に被せ物を装着します。ここまでがインプラント手術(2回法)の流れです。
流れとメリット・デメリットを押さえよう
いかがでしたでしょうか?
インプラント治療を受けようと考えている方は、まずはお口の中の状態をしっかりと調べ、通院や治療にかかる時間を短縮できる1回法と、丁寧な治療期間によってリスクを抑えられる2回法のどちらが適しているかについて、医師とのカウンセリングや検査で判断を行ってください。
大阪・梅田の「デンタルオフィス大阪梅田」では、セカンド・オピニオンも含めた丁寧な診察と話し合いを心掛け、国際インプラント学会の最高位資格である「Diplomate -ディプロメイト(指導医)」をもつ理事長のもとで診察を行っています。 コラム監修者 資格 略歴